ホームズの私生活
 その7 部屋にいるときは、どんな服装?

A

ふだんロンドンの町なかで事件を追うときは、シルクハットにフロックコート姿……これは以前書きました。一方、ベーカー街の部屋でくつろぐときは、「ドレッシング・ガウン」と呼ばれる室内着を着ていました。パジャマの上に着る部屋着で、化粧着などともいいます。ホームズは部屋で推理するときも化学実験をするときも、よくこのガウンを着ていて、青、紫、グレーの三種類をもっていたことが、ワトソンの文章からわかります。

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探偵としての仕事
 その1 ホームズは探偵事務所をもっていたの?

A

『緋色の研究』の冒頭でホームズがいっているように、ベイカー街221Bの部屋が事務所がわりでした。『サセックスの吸血鬼』でも、「わが探偵事務所」といっています。ただ、『ブラック・ピーター船長の死』(『六つのナポレオン像』の巻)でワトソンは、ホームズが「ロンドン市内の各地に少なくとも五か所」のかくれ家をもっていて、変装するのに使っていると書いていますから、ベイカー街だけではなかったようです。

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ホームズ以外の登場人物について
 その1 ホームズの宿敵で大犯罪者、モリアーティ教授とは?

A

今月公開のハリウッド映画『シャーロック・ホームズ シャドウゲーム』でも、ヨーロッパに危機をもたらす罪界の黒幕として登場した、モリアーティ教授。そのぶきみな外見や、ホームズの上手をいきそうな頭のよさについては、『恐怖の谷』『最後の事件』にくわしく書かれています。数学の論文で大学の教授職を得たあと、犯罪にかかわる悪いうわさのために退職したのですが、その後もずっと「教授」と呼ばれているのは、やはり天才的頭脳のせいかもしれませんね。

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ホームズってどんな人?
 その11 ホームズの趣味は?

A

ホームズが探偵の仕事以外で楽しみを感じていたのは、まず音楽(バイオリンの演奏やコンサート、オペラ鑑賞)です。そのほかで興味をもっていたのは、古代コーンウォール語(『悪魔の足』)や初期イギリスの勅許状(『三人の学生』)、中世の宗教劇や陶器(『四つの署名』)など、昔の文化に関わることですが、どれも「趣味」というよりは「研究」に近いものでした。引退してからは、ミツバチを飼育して蜜や蝋をとる「養蜂」に専念したので、これも趣味といえるかもしれませんね。

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ホームズの名せりふ
 その11 「芸術のための芸術ってやつさ、ワトソン。」

A

これは「その10」で触れましたが、『赤い輪団の秘密』のなかのせりふです。下宿屋の女主人が持ちこんだ謎を調べようとするホームズに、ワトソンは、なぜそんなに深入りするのか、何かいいことがあるのかい、と聞きます。それに対して、いいことがあるかなんて考えない、医者が患者をみているときに診察料のことなんか考えないのと同じだ、といっているのです。報酬のためでなく、自分を高めるためだ、と。

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ホームズの私生活
 その6 ホームズといえばパイプ。どんなものをもっていたんだろう。ほかにはどんなたばこを吸ったの?

A

ホームズは何種類かのパイプを持っていて、気分によってそれを変えました。じっと考えごとをするときは愛用の黒パイプ(ヤニがしみ込んだ黒い陶製のパイプ)、議論をしたくなったときは桜材のパイプ、というぐあいです。ほかにもブライアーのパイプ(ツツジ科の木で古い株からつくる)などいくつかがあるほか、葉巻きや紙巻き煙草もよく吸いました。事件の推理をするときにひと晩中ふかすのは、もちろんパイプでしたが。

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ホームズってどんな人?
 その10 バイオリンの名手だけれど、どんな音楽が好き?

A

ホームズはよくバイオリンを弾きますが、コンサートやオペラが好きで、事件捜査のあいまや解決後に行くことがよくありました。たとえば『緋色の研究』では、ドレッバー殺しの捜査の途中でバイオリンの名手ノーマン・ネルーダのコンサートに行っています。また『赤毛組合』では、午前中に捜査をして午後にはサラサーテのコンサートに行きました。そのなかでホームズは、「(ドイツの曲は)イタリアやフランスの曲より、ぼくの好みにあう」し、「ドイツ音楽は、ゆっくり物思いにふけることができる」といっています。このあたりがホームズの捜査の秘密かもしれませんね。

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ホームズの名せりふ
 その10 「ぼくは、楽しみのためにゲームをするんだ。勲章やほかの何かのために、するわけじゃないよ。」

A

これは「悪魔の足」に入っている、『盗まれた潜水艦設計図』でのホームズのせりふです。兄のマイクロフトに、この事件を解決できれば勲章をもらえるかもしれないといわれ、勲章やお金のためじゃなく、自分の楽しみのために捜査をするんだ、と答えているわけです。ほかでもホームズは、事件捜査をするのは報酬のためでなく「芸術のための芸術ってやつさ」といういいかたをしています。

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ホームズの私生活
 その5 鹿撃ち帽とインバネスコートがトレードマーク?

A

どちらもホームズの服装としてよく見るものですね。ワトソンは鹿撃ち帽(ディアー・ストーカー)という呼び名を使っていませんが、『銀星号事件』(「赤毛組合」に収録)では「耳おおいのついた旅行帽をかぶったホームズ」、『ボスコム谷のなぞ』(「消えた花むこ」収録)では「長い灰色の旅行用マントを着て、ぴったりした布の帽子をかぶっている」と書いています。これが鹿撃ち帽とインバネスコートですが、どちらもロンドンから鉄道でいなかへ向かう、旅行のときの姿です。ロンドンで事件を追うときは、シルクハットにフロックコートという、きちんとした服装をしていました。

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ホームズってどんな人?
 その9 芝居がかったことが好きらしいけど?

A

自分が解いてしまった謎を、依頼人にもワトソンにも教えず、最後になって芝居がかった結末のつけかたをする……これはホームズにとって、よくあることでした。彼自身、『恐怖の谷』でワトソンに対し、「むらむらと芸術家精神がわいてきて、いつも芝居がかった演出をしないでは、いられないんだ。」といっています。その典型的な例は『海軍条約文書』事件の結末ですが、これはネタバレになってしまうので、ぜひ読んでみてください(『まだらのひも』の巻に入っています)。

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ホームズの名せりふ
 その9 「ぼくは謙遜がいいことだなどとは思っていないんだよ」

A

これは『ギリシャ語通訳事件』のなかのせりふですね。兄さんのマイクロフトのほうが自分より才能がある、というホームズに、それは謙遜じゃないかとワトソンがいったとき、こう答えたのでした。続きはこうです。「論理をあつかう人間だったら、物事は何でも正確に、ありのままに見なければならない。必要以上にへりくだることは、大げさに見せるのと同じで、事実からはずれてしまうことになる。」やっぱりどんなときにでも、推理のことが頭にあるんですね。

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ホームズの私生活
 その4 最悪の下宿人だったのか?

A

家主のハドソン夫人が「忍耐強い人」といわれていることは、ほかのQ&Aで書きました。ということは、いっしょに住むワトソンもさぞかしたいへんだっただろう、と思わせる場面はいろいろとあります。ホームズと同居をはじめて、しばらくは気づかなかったワトソンですが、やがて彼が「服装も上品できちんとしているくせに、同居人のわたしもびっくりするような、だらしない生活態度を見せる」(『マスグレーブ家の儀式』)男だということがわかります。なにせ、部屋はちらかしほうだいのうえ、射撃練習で壁に穴をあけたり、いやなにおいのする化学実験もしょっちゅうやるのですから。

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ホームズってどんな人?
 その8 本や論文を書いているよね?

A

 ホームズは探偵に必要なジャンルの研究論文を、数多く書いています。たばこの灰の違いについてや、暗号、文書の年代、いれずみ、足跡の型、職業が手のかたちにあたえる影響など、探偵の推理や証拠集めに必要なことがらについての論文が、たくさんあります。
 でもいちばん気になるのは、「一生のうちにはきっと、探偵の仕事をあますところなくとりあげた本を書いてみせる」とワトソンにいった、『探偵学大全』。つまり探偵術についてのガイドブックでしょう。引退後のホームズがはたして書き上げたのかどうかは、わかりませんが……。

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ホームズの名せりふ
 その8 「視野を広くすることは、ぼくたちの職業に必要不可欠なもののひとつだよ。」

A

 これは、『恐怖の谷』でマクドナルド警部にいったことばです。事件とは関係のないような、古い屋敷にまつわる歴史のガイドブックを読んでいたホームズに、いらつく警部。それに対してホームズは、「ちがう意見をたがいにぶつけあったり、一見無関係とも思える知識を応用したりすると、思いがけないほど興味がわくものだ。」ともいっています。探偵の仕事には、いろいろな分野の知識をもち、あらゆることに興味をもつことが必要、といっているわけですが、これは現代の仕事にも通じる名言ですね。

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ホームズの私生活
 その3 ホームズが好きな飲み物は?

A

 イギリス人といえば、紅茶。でも、実は紅茶よりもコーヒーを飲むシーンのほうが多いのです。『バスカビル家の犬』では、ワトソンが出かけていた半日のあいだに、推理をしながら「大きなポット二杯ぶんのコーヒーをのみほした」とありますので、ホームズの頭脳にはコーヒーが向いていたのかもしれません。
 また、お酒ではワインが好きだったようで、料理に合わせて上等なワインを選んでいます。不規則な食生活ではあっても、グルメだったことがわかりますね。

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ホームズってどんな人?
 その7 変装の名人だって?

A

「ただ服装が変わるだけでなく、表情やしぐさ、さらには心までが、新しい役柄に合わせて変化してしまう」とワトソンが『ボヘミア王のスキャンダル』で書いているとおり、ホームズは一流の俳優になれる才能ももっていました。老船長や船乗り、牧師、おばあさん、馬屋番、老古本屋、アメリカ人スパイ……ホームズ物語で読めるだけでも、十数人の「他人」に化けているのです。

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ホームズの名せりふ
 その7「人間は頭脳というせまい部屋に、使いそうな家具だけを全部そろえておかなくてはいけない」

A

 さらに、「あとは物置にほうりこんでおけばいいのさ。必要になったら、物置にとりにいけばいいんだから。」とつづく、『オレンジの種五つ』でのせりふですね。推理するために必要な、つまり自分の仕事に役立ちそうな知識は頭に入れておいて、それ以外の知識は百科事典などにたよってかまわない、というのがホームズの考え方です。ですから、彼は犯罪記録や地質学、化学などについては物知りでしたが、天文学などについてはあまりよく知らなかったようです。

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ホームズの私生活
 その2 ホームズの食生活はどんなふうだった?

A

 推理がうまくいかず頭を悩ませているときは、ほとんど食べないことが多いですし、ふだんはたいてい粗食です。でも、犯人逮捕のためにどこかへ踏み込む直前や、事件が解決してほっとしたときには、ワトソンとレストランへ行きました。今でもロンドンにある「シンプソンズ」という高級レストランは、よく使っていた店のひとつです。また、自分で料理をつくることもありました(『緋色の研究』)。どんな料理か、食べてみたいですね。

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ホームズってどんな人?
 その6 ホームズの射撃の腕前はどの程度?

A

「マスグレーブ家の儀式」事件(『消えた花むこ』の巻)では、壁に向けてピストルを撃ち、弾の跡で「VR」というビクトリア女王を意味する文字をつくっています。ワトソンにいわせると、これは射撃練習なのだそうですが、近距離とはいえ、弾の穴をつづけて文字をつくるのはむずかしいでしょうね。実際に事件中でホームズがピストルを撃ったのは、『バスカビル家の犬』などですが、あまり多くはありません。

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ホームズの名せりふ
 その6 「すべての証拠がそろわないのに推理をはじめるのは、大きなまちがいだ」

A

 これは、いろいろとかたちを変えてホームズが何度もいっているせりふのひとつです。「ボヘミア王のスキャンダル」では、データが足りないと無意識のうちに理論に合わせて事実をねじ曲げてしまうからだ、ともいっていますね。『緋色の研究』、「ボヘミア王のスキャンダル」(『消えた花嫁』の巻)、「第二のしみの謎」(『金ぶちの鼻めがね』の巻)、その他さまざまにありますので、探してみてください。

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ホームズの私生活
 その1 いつもの生活はどんなふう?

A

いつもは朝寝坊(「まだらのひも」事件)。徹夜をするときはそうでないようですが(『バスカビル家の犬』)、事件があるときは早起きです。休息をとらずに一週間ぶっつづけで活動することも。そういうときは、食事も睡眠もほとんどとらなかったりします。事件の捜査で夢中になると、自分の健康のことなどかえりみないので、倒れてしまったことも何度かありました。でも、健康回復のために行った保養地でやっぱり事件に出会い、捜査してしまう……ホームズの運命ですね。

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ホームズの失敗談
 その5 結局どのくらい失敗したの?

A

依頼人に死なれた「オレンジの種五つ」事件(『ぶな屋敷のなぞ』収録)で、ホームズは依頼人のオープンショーに、「失敗は四度ありましたよ。三度は男に、一度は女にだしぬかれました。」と言っています。この「女に……」というのは、おそらくアイリーン・アドラーにだしぬかれた「ボヘミア王のスキャンダル」(『消えた花むこ』収録)でしょう。もうひとつの失敗事件、「黄色い顔」は、これよりあとの事件ですので、合計すると6件というのが、失敗の数かもしれません。

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ホームズってどんな人?
 その5 格闘術やスポーツが得意って聞いたけど?

A

『緋色の研究』でワトソンがつくったホームズの能力一覧表には、「棒術、ボクシング、剣術の達人」とありました。ボクシングでは、アマチュアながらプロと試合をしたこともあり(『四つの署名』)、「同じ重量級ではかなう者がないくらいすぐれたボクサー」だとワトソンは書いています(「黄色い顔」)。棒術は「高名な依頼人」事件(『最後のあいさつ』収録)で、暴漢から身を守るのに役立ちました。
しかし、なんといってもいちばん有名なのは、モリアーティ教授との闘いで使った「バリツ」とホームズが呼ぶ、格闘技でしょう。そのことは『三年後の生還』の解説をごらんください。

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ホームズの名せりふ
 その5 「あの晩の、犬のおかしなふるまいに注意すべきです。」「あの晩、犬は何もしませんでしたが。」「それが、おかしなことなんですよ。」

A

これは『赤毛組合』の巻に入っている「銀星号事件」での、ホームズとグレゴリー警部のやりとり。「犬のふるまいがおかしかった」というホームズの説明に、警部は「ふるまいといっても、何もしなかったじゃないか」と思うわけですが、実はその「何もしなかったこと」、つまり吠えなかったことこそ、事件の謎を解くカギのひとつだったわけです。なぜそれがカギになったかは……本編を読んでみてください。

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ホームズの失敗談
 その4 依頼人に死なれた!

A

名探偵とたたえられていても、犯人をとりにがしたり、見当ちがいの推理をしたりということのほかに、依頼人の命を救えなかったという失敗も、ごく少ないながら、ありました。その代表的な事件が、「オレンジの種五つ」(『ぶな屋敷のなぞ』の巻)と、「おどる人形」(『三年後の生還』の巻)です。もちろん、どちらもたんなる失敗の話ではなく、ホームズのすばらしい推理で事件は解決するわけですが。

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ホームズってどんな人?
 その4 音楽好きで、演奏もうまかったって?

A

ホームズといえばパイプ、ホームズといえば虫めがね。でも、ホームズはバイオリンの名手だということを、知っていましたか? しかも持っているバイオリンは、ストラディバリウスという、世界的に有名な名器で、いまのお金にして一千万円以上もするもの。即興で作曲もしてしまうし、事件捜査のあいまに考えをまとめるために演奏したりも、したのです。

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ホームズの名せりふ
 その4 「きみは見ているだけで、観察していないんだ。見ることと観察することとは、まるっきりちがう」

A

これは『消えた花むこ』の巻に入っている「ボヘミア王のスキャンダル」事件で、ホームズがワトソンにむかっていっているせりふです。でも、似たような意味のことをいろいろな事件でいっていて、これもベスト3に入る有名なせりふといえるでしょう。ホームズはまた、理想的な探偵に必要なのは、細かい点を観察する力と、そこから推理をくみたてる力、それに幅広い知識の三つだともいっています。

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ホームズの失敗談
 その3 見当はずれの推理

A

ホームズのいちばんの武器は、正確な観察と分析にもとづいた、鋭い推理。でも、ごくごくたまに、見当はずれの推理をしてしまうこともありました。「ぶな屋敷のなぞ」に収録の『黄色い顔』という事件では、依頼人から聞いた話から推理をして、恐喝事件だという結論を出します。ところがそれが、みごとにはずれてしまったのです。反省したホームズは、事件のあった地名をひきあいに出して、「今後ぼくが自信過剰のように見えたら、『ノーベリーを思い出せ』といってくれないか」とワトソンにたのむのでした。

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ホームズってどんな人?
 その3 ホームズって冷たい人だったの?

A

ワトソンに“観察と推理の機械”とまでいわれたホームズですから、さぞかし冷たい男だろうな、と思われるかもしれません。たしかに、ワトソンに対してとんでもなく冷たい言い方をすることが、ありました。でもそれは、「強烈な体験をいくつもくぐりぬけてきたせいで、感覚がマヒしている」(『恐怖の谷』第二章)せいでもあったのでした。「サセックスの吸血鬼」に収録の『三人のガリデブ氏』事件では、ワトソンに対してかぎりない思いやりを見せており、友だち思いのあたたかい性格であることがよくわかります。

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ホームズの名せりふ
 その3 「ささいなことほど重要なものはないんです」

A

これは「赤毛組合」に収録の『変身』事件で、ホームズが言っているせりふですね。ささいなこと、つまり一見どうでもいいようなこまかいことこそ、事件を推理するうえでは重要なのだ、という意味です。ホームズの探偵術にかかわる名せりふでも、ベスト3に入るこの有名な言いまわしは、全部で60ある事件の中で少なくとも9回出てくるので、さがしてみるとおもしろいでしょう。

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ホームズの失敗談
 その2 犯人をとり逃がした!

A

あやしい人物の乗った馬車を追うものの、うまくいかずにとり逃がしてしまう……名探偵といえども、そんな失敗談がいくつかあります。ひとつは、『バスカビル家の犬』で依頼人を尾行しているらしい男を追ったとき。もうひとつは『緋色の研究』で、手がかりの指輪を受け取りにきた、おばあさんを追ったとき。『バスカビル家の犬』では、男の乗っていた辻馬車をつきとめるのですが、その御者からきいた話に、思わず苦笑いしてしまいます。……くわしくは本をお読みください。

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ホームズってどんな人?
その2 頭がいいだけでなく、体力もあった。

A

探偵というのは、推理ができるだけでなく、犯人を追いかけたり格闘したりもしなくてはなりません。ホームズは事件がないと何もする気が起きず、だらしない生活をしていましたが、ひとたび火がつけば猟犬のように行動し、睡眠や食事もとらずに動きまわりました。ワトソンによれば、ホームズは走るのが速く(『バスカビル家の犬』)、うでの力が強く(「まだらのひも」収録『緑柱石の宝冠』)、手先はびっくりするほど器用で(『緋色の研究』)、鋼鉄のようにきたえあげた体だったということです。

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ホームズの名せりふ
 その2 「ありえないことをひとつひとつ除いていけば、最後に残ったものは、どんなにありそうにないことでも、真実だ」

A

ホームズが推理のすじみちを説明するときに、よく使うことばです。事実によって、「完全にありえない」とわかったことを、ひとつひとつ除いていく。そうしたら、最後に残るものが、ふつうに考えたら「ありそうもない」ことだとしても、真実なのだ、と。このことばは、少しずつかたちを変えて、いろいろな事件で登場します。『緑柱石の宝冠』『四つの署名』……そのほかにもありますので、さがしながら読んでみておもしろいですよ。

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ホームズの失敗談
その1 女性にだしぬかれた!

A

ごくごくたまにですが、ホームズが事件捜査の相手にだしぬかれたことも、ありました。しかも相手が女性だったことが、ただ一度だけ。「ホームズが好きになった女性」というQで紹介した、アイリーン・アドラーです。すっかり事件を解決し、彼女をだしぬいたつもりのホームズが、じつは逆にだまされてしまう……。なぜ、どうやってなのかは、『消えた花むこ』の「ボヘミア王のスキャンダル」をお読みください。

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ホームズってどんな人?
 その1 万能のようで、じつは知識にかたよりが……。

A

植物学、地質学、化学、解剖学、犯罪事件記録……ホームズはそういう探偵仕事に役立つ知識を、豊富にもっていて、何でも知っているように思えます。ところが、捜査にすぐ必要でない、文学や哲学の知識は、ほとんどゼロ。ワトソンによれば、地球が太陽のまわりを回っていることさえ、知らないということでした!(『緋色の研究』をごらんください。)もっとも、その後の事件では、ワトソンと太陽系の話をしたりしていますので、ほんとうは知っていたのかもしれませんね。

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ホームズの名せりふ
その1 「悲しみには仕事がいちばんの薬になるよ、ワトソン」

A

これは奥さんを亡くしたワトソンに再会したとき、かけたことばです。何かに熱中していれば、あるいは体を動かしていれば、悲しみもまぎれる。いかにもホームズらしいことばだし、彼が思いやりあふれる人物であることもわかります。今回の東日本大震災で不幸にあわれた方たちのことを思い、第1回は特別にこれをえらびました。
事件名は「帰ってきたホームズ」。8月に出る予定の『三年後の生還』に入っています。

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ホームズが好きになった女性はいたの?

A

シャーロック・ホームズは「女嫌い」だとよくいわれますが、たしかにそういう発言は多いですし、探偵という仕事に恋愛はじゃまだと考えていたようです。でも、彼が好きになったと女性――生涯忘れなかった女性は、ただひとりいました。『ボヘミア王のスキャンダル』に登場する、アイリーン・アドラーです。元ワルシャワ帝室オペラのプリマドンナで、とびきりの美人でしたが、美人だから彼女を気に入ったわけでは、ありませんでした。知性と教養があり、決断力と勇敢さをそなえ、ちょっと茶目っ気がある……そんなところにほれ込み、一種の「好敵手」としても尊敬したのです。

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ホームズの記憶にふかく残っている女性はだれ?

A

アイリーン・アドラーほどではなくても、ホームズが気に入った女性はいました。その一番は、『ぶな屋敷』の依頼人、バイオレット・ハンターでしょう。ホームズにしてはめずらしく、初めて会ったときから気に入ったようですが、事件がすすむにつれ、勇気があってかしこい彼女をさらに気に入り、事件解決のために助手のようなことまでさせたのです。
ホームズはどうやら、かしこくて活発な、勇気のある女性が好みだったようですね。もちろんそれに「美人」という要素もくわわりますが、外見が魅力的でもおそろしい殺人犯、という女性も見てきていますので、見た目にまどわされることはなかったようです。

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ホームズは婚約や結婚はしなかったの?

A

『四つの署名』で、ワトソンから結婚することを聞かされたホームズは、自分なら結婚なんかしない、といい切っています。そして、結局ずっと独身主義をとおすのですが、実は一回だけ、ある事件の捜査のとき、メイドの女性と婚約をしました。ただし、捜査で情報を手に入れるための、にせの婚約です。ふつうなら罪もない女性をだましたりしないホームズですが、このときはそうするしか解決のしようがなかったのでした。いったいどの事件での出来事なのか……またの機会にお知らせしまょう。自分でさがしてみても、おもしろいかもしれませんよ。

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ホームズにきょうだいはいたの? 家族は?

両親のことは不明ですが、お兄さんのマイクロフト・ホームズがいました。

シャーロック・ホームズは自分のことをほとんど語らないので、田舎の大地主の子孫だということくらいしかわかっていません。でも、マイクロフトという、とても頭のいい七歳年上のお兄さんがいて、『ギリシャ語通訳事件』『ぬすまれた潜水艦設計図』というふたつの事件に登場します。マイクロフトは、弟のシャーロックと正反対のタイプ。都心にある下宿と、すぐ近くにある職場(役所)、それに下宿の真向かいにあるクラブの三カ所をまわる以外、ほとんど外出せず、運動もしないのです。そのせいか胴回りはかなり太いのですが、観察と推理の力は弟よりもすごいといわれています。しかも、イギリス政府でめだたない職につきながら、じつは政府そのものを動かしている、かげの大物なのです。

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ベーカー街の下宿って、どんなところ?

日本でいう「まかない付きの家具付き下宿」。3部屋と小部屋がひとつありました。

間取りはふたつの寝室と、共通でつかう大きな居間、それに物置のような空き部屋がひとつ。居間には机や食事用のテーブルがあり、ホームズとワトソンの書斎として、またホームズが依頼人をむかえる事務所としてもつかわれました。居間とホームズの寝室は二階、ワトソンの寝室は三階にありました。家賃もけっこうはらっていたらしく、いまのお金に換算して月に30万円とも40万円ともいわれています。この書斎(居間)を再現したモデルは世界中にありますが、日本にも神戸の英国館(異人館のひとつ)にありますので、ぜひごらんください。

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下宿のハドソン夫人というのは、どんな人?

女性家主で、ホームズたちの世話をしてくれた、料理の名人です。

ハドソン夫人の年齢はわかりませんが、それほど年輩でない未亡人だと考えられています。この時代、夫をなくした女性が自分の家を下宿にすることはよくありました。
ハドソンさんも自分は221番地の一階に住み、上の階にいるホームズやワトソンの世話をしていたのです。未亡人といっても、メイドやコックさんをやとっている場合が多かったのですが、ハドソンさんは自分でホームズたちの料理をつくっていますし(ホームズはいつもその料理をほめています)、依頼人や刑事たちといった、お客さんをとりついでもくれました。ホームズをねらって放火されたり、銃弾を撃ち込まれたりするのに、ホームズを尊敬して協力してくれたのですから、じつに忍耐強い人だったといわれています。

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ホームズはどのくらいの数の事件をあつかったんだろう?

はっきりとはわかりませんが、引退するまでに1500件以上はありました。

ワトソンがホームズ物語として書きのこしてくれた事件は、ぜんぶで60件。しかし、それはホームズが手がけた事件のほんの一部分でした。1891年に起きた『最後の事件』で、ホームズは「これまでに千件をこす事件を手がけてきた」といっています。
ホームズが探偵をはじめたのは1877年か1878年ですから、14年ほどで1000件以上をあつかったわけです。この事件のあと、ホームズはモリアーティ教授と対決して行方不明になりますが、1894年に帰ってきます。そして探偵仕事を再開し、1901年までに、さらに何百という事件をあつかったと、ワトソンは記録しています(『あやしい自転車乗り』)。ホームズが引退したのは1903年の終わりころですから、1500件以上、ひょっとすると2000件近い事件をあつかったかもしれません。

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ワトソンの家族やきょうだいは?

お父さんとお兄さんのことしか、わからないんです。

ほかの豆知識でも書いたように、ワトソンは軍医として戦争に行ったあと、1881年ころロンドンに帰ってきました。そのときイギリスには、友人も親類もまったくいなかった、と『緋色の研究』に書かれています。
ただ、そのころもお兄さんはどこかで生きていたようです。1888年に起きた事件『四つの署名』のなかで、ワトソンが自分の懐中時計をわたしてホームズに推理させるシーンがあるのですが、そこから、お兄さんは『四つの署名』事件の直前に死んだのだろうとわかるのです。また、このときのホームズのせりふから、ワトソンのお父さんはそのずいぶん以前に死んでいること、名前がH・ワトソンだったということがわかります。こう書くと孤独そうなワトソンですが、恋愛と結婚の相手にはめぐまれていました。……それはまた、別の豆知識で。

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電話が普及していないのでホームズはよく電報を打つし、郵便での連絡もすぐつくようだけれど、そんなに早かった?

ロンドン市内では、手紙のほとんどが、出したその日にとどきました。

このころの郵便は、朝の7時から夜8時までのあいだ、1時間おきに配達されていたので、午前中に出せばその日のうちにとどきました。現代のイギリスでは、速達にしても配達は次の日になりますから、百年以上前のほうが早かったわけです。
電報はもっと早く、イギリス国内なら、発信してから数時間で配達されました。値段がちょっと高いのですが、そのころの捜査には欠かせなかったわけです。では、電話は? ……『緋色の研究』のころ、ロンドンで電話に加入している人は300人くらいしかいなかったとのこと。捜査にはつかえなかったでしょうね。

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ホームズは何歳?

ざんねんながら、ホームズの誕生日がいつかは、ワトソンが書き残してくれませんでした。

そこでホームズファンたちは、物語に書かれていることから、「推理」することにしたのですが、『最後のあいさつ』という作品に書かれているホームズの年齢とか、ホームズがしょっちゅう引用するシェークスピア劇のせりふから、誕生日は1854年1月6日と推理されています。この日には、世界中のホームズファンたちが、ホームズの誕生日を祝うことになっているんですよ。

また、ワトソンの記録から、ホームズが探偵を開業したのは1877年か1878年、『緋色の研究』という事件で、はじめてふたりが出会ったのが、1881年ごろと推理されています。だから、ホームズは23歳か24歳で探偵をはじめ、27歳のころにワトソンといっしょに下宿をはじめたことになります。ワトソンのほうはホームズよりちょっと年上で、1852年に生まれたという説が有名です。

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ワトソンはどういうお医者さんだったの?

ワトソンの本職は、外科のお医者さんです。

ホームズに出会う前は、軍隊で兵士のけがを手当てしたりする軍医でした。

ロンドン大学を卒業して医師の資格をとったワトソンは、軍医としてインドに行きましたが、アフガニスタンの戦いで重傷をおったあと、腸チフスにかかってしまい、イギリスにもどってきます。そして1881年ごろホームズと出会ったあたりのことが『緋色の研究』という作品に書かれています。

その後、1888年には『四つの署名』事件でメアリ・モースタンという女性と知り合い、結婚して医院を開業。つまり、「町のお医者さん」になったわけです。でも1894年にはまたベーカー街でホームズといっしょに住みはじめていて、これはおくさんのメアリが亡くなったせいだといわれています。

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ロンドン警視庁というのはどういうところ?

ロンドン警視庁のほんとうの名は、スコットランド・ヤード。

ロンドン警視庁のほんとうの名は、スコットランド・ヤード。1829年に創立されたときに本部のあった場所がその名前となっています。もともとは、大昔にスコットランド王がロンドンを訪問するときにつかった宮殿があった土地でもあります。

ホームズが活躍していたころのロンドン警視庁は、ロンドンの市内だけでなく、まわりの州の一部も管轄していて、かなり広い地域をとりしまっていました。

1878年、つまりホームズが探偵の仕事をはじめたころに、この警視庁の組織がかわって、私服の刑事と制服の巡査が区別されます。そのときできたのが「犯罪捜査部」で、ホームズ物語に登場する刑事のほとんどは、『バスカビル家の犬』にでてくるレストレード警部も、『緋色の研究』のグレグソン警部も、みんなここに所属しています。

なかでもレストレード警部は、ホームズといっしょに捜査した事件の数も、年数も、いちばん多いと思われます。ホームズは最初、レストレードをあまりほめなかったけれど、あとになると、「ブルドッグのようにねばりづよい、警視庁でもいちばんの警部」だと認めています。

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