第7回

2019年02月15日

Scene04 10月27日(土曜日) かじのろわいやる。(後編)



  昼食も終え、いよいよカジノへ!
 入り口で、黒服から手荷物検査とボディチェックを受ける。後で思い出したのだが、そのときぼくは刃物を持っていた。でも、没収されることなく入場できた。
 いいのだろうか?(※良い子はぜったいにマネしないでね!)
 入ったすぐのところまでは無料。奥に進むには、17ユーロ必要となる。この17ユーロのうち、7ユーロが入場料に当たり、10ユーロでカクテルを飲むかルーレットやカードで遊ぶか選ぶことができる。

カジノ・ド・モンテカルロのエントランス・ホール。
ここから先は、撮影禁止です。

 いつもルーレット台などが置かれてる場所やレストランは、工事の関係で入れない。そのぶん、ふだんは入ることのできない奥の部屋へ入れてもらう。
 カードの台が4つ。ルーレット台が2つ。あと、隣にカクテルを提供しているバー。
 ぼくは、しばらくルーレットを見る。
 フランス語を話すおばさんが、丸いチップを数字の書かれたルーレット台に何枚か置いた。
 ディーラーがルーレットを回し、ボールを入れる。
 賭け方は、簡単に書くと2つ。
 ルーレットには、数字の書かれたポケットがついているので、ボールが落ちるポケットの数字を予想して賭ける方法。
 もうひとつは、数字には赤か黒の色がついているので、どちらかの色に賭ける方法。
 勢いよく回っていたルーレットが止まり、ボールがポケットに落ちる。おばさんの賭けた数字ではない。
 3人の高齢のクルピエが、グラウンド整備に使うトンボを小さくしたようなレーキで、チップを集める。
解説
⇒「クルピエ」はディーラーを指すフランス語で、ルーレットなどのカジノゲームを進行する人たちのこと。


 おばさんを見ていると、ルーレット盤を4つに分割して、数字のグループを作って賭けているようだ。なかなか頭のいい賭け方だと思う。
 でも、ディーラーのほうが、一枚上手。
 3回に1回ぐらい勝たせて、最終的にはチップを全部奪い取ってしまった。
(このおばさんは、あとでブラックジャックもやっていたが、やっぱり全部取られていた)
 ディーラーが、ぼくに、「いかがですか?」と賭けるように誘ってくるが、ぼくは笑顔で断る。
「赤の20」を連続で出したり、いいタイミングで「0」を出すディーラーと、勝負する気にはならない。
 しばらく見ていて、生涯ルーレットはやらないほうがいいという結論を出す。(人間、堅実に働くのが大切だと思います)


 午後7時からは、タキシード着用の真剣なカジノが開かれる。
 一般客相手のディラーでも、あれだけの技術を持ってるんだ。7時からのカジノを想像すると、ちょっと怖くなる。


背後に見えるのが、モナコGPで使われるヘアピン

 山室さんも垂水さんも、ギャンブルには手を出さない。
 10ユーロでカクテルを飲むことにする。
 垂水さんが、6ユーロプラスしてドライマティーニを注文する。ぼくも真似をして、6ユーロ追加する。
 ドライマティーニは美味しかったけど、量が少ない。二口で、飲み干してしまった。(あと、高い……)。
 山室さんは、ギムレットを注文する。
「早すぎませんか?」
 ぼくの台詞、山室さんはわかってくれたけど、若い垂水さんには通じなかった。
 ぼくは、チップは丸いコインのような形のものだけだと思っていた。
 ところが、入り口の人が教えてくれたところによると、高額チップは丸くなく、長方形の札のような形をしていた。


 カジノを出るとき、2000ユーロを賭けている客がいた。
 1ユーロ130円とすると、26万円! 一勝負に、26万円!
 1円でも安いインスタントラーメン5袋セットを探すことに人生を賭けているぼくに、カジノは縁のない世界だということがわかった。 


 カジノを出て、隣にある小さめのカジノも見る。
 こちらは入場料もなく、山室さん曰く「パチンコ屋さんみたいなものですね」。
 確かに、雰囲気が違う。
 ディーラーは不在で、客は、機械相手にギャンブルを楽しんでいる。金が賭かってなかったら、ゲームセンターと変わらない。ルーレットも、テレビゲームのように、モニタの中で回っていた。


 100番のバスで、ニースに帰る。
 考えてみたら、フランスからモナコ公国と、国から国に行っていたわけだ。でも、バスで気軽に行き来できるため、隣町に遊びに行ったような感じ。


 ニースに帰ってから、本屋さんへ。
 垂水さん曰く「オタク向けの品揃えです」。
 たしかに、日本で人気のマンガが揃っている。少女マンガは、知らないもののほうが多かった。
 不思議だったのは、「はじめの一歩」のフランス語版。119巻が置いてあったのだが、1巻から118巻までは、どこにもない。お店の人に言ったら、出してもらえたのだろうか?
 何を買うか迷った末、『さすらいエマノン』と孤独のグルメの『ヴェネツィア』を買った。旅先で本を買うのは、実に久しぶり。(荷物が重くなるので、本は買わないようにしてるんです)。


 垂水さんと一緒にとる最後の夕食。
 彼のおかげで、ニース住人の生の声を聞くことができた。それは、ガイドブックには載っていないような貴重な情報。(ひょっとすると載ってるかもしれないけど、ぼくはガイドブックを読まないので――)
 ただ残念なのは、ぼくに受け止めるだけの知性や教養、記憶力がなかったこと……。本当にすみません。
 もし、もう一度、はやみねを案内してくださるのなら、今度は奥さんとモン・サン=ミシェルを見にくるので、よろしくお願いします。


 ホテルの部屋に戻ると、今日もサルサの店は賑やかに営業している。
 そういえば、朝、山室さんが「部屋にポルターガイストが出るんです……」と言っていた。
 山室さんは、心霊現象の類いが苦手の人。明日の朝、どうだったのかを訊くのが楽しみだ。

 

27日のヘルスケア
 ウォーキング+ランニングの距離   16,3km
 歩数                27,091歩

 


オーシャンズ2の冒険は、まだまだ続きます。
次回は3月1日(金)更新予定。お楽しみに!

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