2月15日 選評公開③

2023年02月15日

(受付番号順)

No. 18 『わたしの恋はバラ色です!』 

主人公の恋バナと思いきや、家族の「一大事」が、中心に描かれている作品です。起きるできごとは「大人の事情」なのですが、テンポがよくコミカルで、思わず笑ってしまいます。読者を楽しませようとしているところが、素晴らしい! 3人グループでの合作とのことですが、ワイワイと楽しそうに創作している姿が想像できました。

                                     

 No. 65 『小さなキセキの恋物語』

いじめられている主人公と家庭の事情を抱える男の子との、まさに"魂のふれあう奇跡の恋”。ただの恋愛のお話ではなく、お互いの存在、命の大切さ、相手を思う気持ちが、深い洞察力と鋭い心理描写、卓越した表現力で描かれていることに衝撃を受け、心が揺さぶられました。2人の語りが交互に綴られていく構成も感動をさらに盛り上げています。終盤で彼に訪れた大きな悲しみ、その時彼女がとった行動とは? そしてラストの思いがけない2つのエピソード……たたみかけるように盛り上げるこの展開も、じつに素晴らしかったです!!


No. 82 『推しキャラと会話が成立しました』

非常にわかりやすく整理されたストーリーだと拝読しながら思いました。キャラクターもそれぞれが良い個性を持っており、どのキャラクターも不可欠な役割があると感じています。主人公ちはやの心理的な葛藤や決断など、微細な心情表現も明確かつ的確であり、表現力をひしひしと感じます。また、後半に展開される登場人物の視点にもとづく展開は、作品に動きをつける機能があるように思います。出会いから別れまで、ひとつの作品としてしっかりした骨格を持っていた点にも作家としての力が現れていると思いました。


No. 148 『Time Passes』

百人一首をうまく織りまぜて、主人公や憧れの先輩、犯人の気持ちをよく表現しています。独特の世界観があり、百人一首やかるたが好きな気持ちが伝わってきました。ミステリー要素も入れつつ、初々しい主人公の男の子と先輩との淡い恋物語。冒頭の桜の入学シーンとラストシーンをリンクさせている構成も素敵です。これからの2人の恋のゆくえが気になります。


No. 162 『笑顔の4月は、始まりの月。』

「心のお悩み相談」のサイトに寄せられた身近なクラスメートたちの胸に秘めた悩み……双子、児童施設出身、親の再婚など、それぞれの葛藤、トラウマに根差した劣等感がとても丁寧に描かれています。そして、彼らの交流によって、次第に皆の心に希望の光が射していくところが、とてもいいお話だと思いました。

No. 213 『いつまでも君と笑っていたい』

ボッチの委員長、嫌われる痛み、寄り添ってくれる男の子……彼を好きになっていく。やっとできた親友。父の死、先生からのまさかの告白、男の子の悲しい過去と怖れ。その彼は、なんとずっと忘れられないあの男の子だった……ただの恋愛作品ではない、心を揺り動かす‟運命の愛”に震えました。このような作品を描いたとは……脱帽です!

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